動物教育と動物園教育を思う
動物教育と動物園教育を思う

園を退き2か月近くなるが、この間2つのイベントに参加させてもらった。 1つは、6月1日に林野庁東北森林管理局(以下管理局)と合同で行った「イヌワシを学ぶ」イベントだった。動物園側は絶滅が危惧される猛禽イヌワシの解説、また野生での繁殖成功率が低下し危機的な状況であり、動物園は飼育下個体群づくりに力を入れてきたことを紹介した。
森づくり、森の生態系保全などの専門家である管理局にはイヌワシが生息する森の環境についてお話を頂いた。参加者は講話の後はクイズ大会もあり、楽しみながらイヌワシと森の大切さを学んだイベントであった。
イヌワシと生息環境理解につなげる動物教育と、飼育下でイヌワシの保全活動をしている動物園教育がうまくかみ合った実践例だったが、イベントの成功は森林環境の専門家である管理局の協力なしではあり得なかったもので、感謝したい。
もう1つは、6月21日に開催された「世界キリンの日」だった。野生で生息数を減らすキリンへの関心を高めようと、1年で最も昼が長い夏至の日を、世界で最も首の長いキリンの日に選んだらしい。大森山でもこの日、キリン舎に来園者をお招きし、ワクワク、ドキドキ感の中、キリンの理解につなげようと限定30名での特別サービス日にしたのだ。
キリン担当の飼育員さんが、野生での生息状態のほか、キリンの頭骨などの標本も用いながら体の解説など動物教育を行い、後半はキリンの健康管理とその課題対応のため大森山が全国に先駆け取り組んできた「ハズバンダリートレーニング」の話とその実演をご覧いただき、血液検査や血圧検査なども可能になり、キリンの健康管理などに役立っていることを紹介していた。まさに動物園教育、参加者は最後にエサやり体験もできキリンを肌で感じたイベントだった。
動物園の大事な意義の一つは、楽しみながら動物と命のすばらしさを体感し知ってもらい、その先に動物が生きる自然にも関心を広げてもらうことだ。そのためには動物を知ってもらう動物教育が大事だし、その展示動物を守り保全する動物園活動が重要であり、そのことを伝える動物園教育は益々重要になってくるに違いない。
2つのイベントに参加し、大森山の若いスタッフは動物教育、動物園教育をしっかり実践し始めていることに感心した。今後は是非、よりよい解説のため、スタッフが互いに意見をぶつけ合いながら切磋琢磨し、教育サービスを高みに上げ、大森山を売り出してほしいものだ。期待したい。
令和7年6月
大森山動物園〜あきぎんオモリンの森〜 名誉園長 小松 守

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